ガイドSG

OSI参照モデルとTCP/IPプロトコル群|カプセル化・パケット構造・各層の役割基本解説

公開: 2026-10-03更新: 2026-10-05
情報セキュリティマネジメント(SG)の通信の層と役割を学習。階層ごとの役割とTCP・UDPの違いを整理します。比較表とオリジナルの事例問題で、用語の違いや対策を選ぶ根拠を確認します。

通信の層と役割では、階層ごとの役割とTCP・UDPの違いを整理します。用語を覚えるだけでなく、事例の条件に合う対策を選べるように整理しましょう。

科目Aで基本的な意味を確認し、科目Bでは「守る情報・起きた事象・組織のルール・担当者の権限」を読み取ります。本文の確認問題は、考え方を練習するためのオリジナル問題です。

1. OSI 7階層モデルとTCP/IPモデルの完全対応表

OSI層

OSI層の名称

TCP/IP階層

主なプロトコル

データの単位(PDU)

対応するセキュリティ機能

第7層

アプリケーション層

アプリケーション層

HTTP, HTTPS, SMTP, POP3, DNS, DHCP

メッセージ / データ

WAF(Web Application Firewall), コンテンツフィルタリング

第6層

プレゼンテーション層

アプリケーション層

文字コード、画像形式等

データ

データの暗号化・復号, 圧縮

第5層

セッション層

アプリケーション層

セッションの管理等

データ

セッションの確立・維持・切断

第4層

トランスポート層

トランスポート層

TCP(高信頼・順序制御), UDP(配送・順序を保証しない)

セグメント(TCP)/ データグラム(UDP)

ポート番号制御(L4パケットフィルタリング), SYN Flood対策

第3層

ネットワーク層

インターネット層

IP, ICMP, IPsec

パケット

IPアドレス制御, ルーティング, IPsec(暗号化・トンネリング)

第2層

データリンク層

ネットワークインタフェース層

Ethernet, 無線LAN(Wi-Fi: IEEE 802.11), VLAN

フレーム

MACアドレスフィルタリング, IEEE 802.1X認証, VLAN分離

第1層

物理層

ネットワークインタフェース層

LANケーブル(UTP), 光ファイバー, コネクタ

ビット(電気・光信号)

物理配線の施錠管理, 電磁波盗聴(TEMPEST)対策

2. データのカプセル化と非カプセル化の流れ

データが送信側から受信側へ送られる際、上位層から下位層へ進むにつれて各層の制御情報(ヘッダー)が付加されていきます。これを「カプセル化(Encapsulation)」と呼びます。受信側では逆に下位層から上位層へヘッダーが取り除かれていき、これを「非カプセル化(Decapsulation)」と呼びます。

  1. アプリケーション層:Webブラウザが「HTTPリクエスト(GET /index.html)」を生成する。

  2. トランスポート層:HTTPデータに「TCPヘッダー(送信元ポート番号・宛先ポート80/443、シーケンス番号)」を付加してセグメント化する。

  3. ネットワーク層:TCPセグメントに「IPヘッダー(送信元IPアドレス・宛先IPアドレス)」を付加してIPパケット化する。

  4. データリンク層:IPパケットに「Ethernetヘッダー(送信元MAC・宛先MACアドレス)」と誤り検出符号「FCS(トレーラ)」を付加してフレーム化する。

  5. 物理層:Ethernetフレームを電気信号や光信号のビット列に変換し、ケーブル上を送出する。

3. TCPとUDPの決定的な相違

観点

TCP

UDP

接続

接続を確立して通信する

コネクションレス型

配送・順序

再送や順序制御等を行う。接続断でも配送完了を必ず保証するという意味ではない

UDP自体は配送・順序・再送を保証しない。アプリ側で補うことはできる

負荷

ヘッダーは20バイト以上。制御の負荷がある

ヘッダーは8バイト。実際の速さ・遅延は用途と実装次第

用途の例

HTTP/1.1・HTTP/2、SMTPなど

DNSの多くの問合せ、NTPなど。HTTP/3のQUICもUDP上で動く

4. 科目B形式実戦シナリオ演習

演習1:ファイアウォール(FW)とWAFのパケット検査範囲の比較

〔背景〕教育系Webサービスを運営するA社では、ユーザーからの入力フォーム経由でSQLインジェクション攻撃を受け、顧客データが一部閲覧されるインシデントが発生した。

〔調査結果〕A社のネットワーク境界には、ポート番号とIPアドレスを制御するステートフルインスペクション型ファイアウォール(FW)が設置されていたが、攻撃トラフィックは「ポート443(HTTPS)宛ての正当な通信」として通過していた。

〔設問〕OSI参照モデルの観点から、FWがこの攻撃を阻止できなかった根本的理由と、今後の対策機器の選定として最も適切なものはどれか。

  • ア:FWは第3層(ネットワーク層)および第4層(トランスポート層)で通信を制御するため、第7層(アプリケーション層)のHTTPリクエストパラメータ内部のSQL文を検査できない。対策として第7層を検査できるWAFを導入する。

  • イ:FWのMACアドレスフィルタリング(第2層)が無効化されていたため。第2層スイッチを導入してMACアドレスを全件登録する。

  • ウ:TCPの3ウェイハンドシェイク(第4層)が完了していなかったため。UDP専用のFWに入れ替える。

  • エ:WebサーバのIPアドレスがプライベートIPアドレスだったため。グローバルIPアドレスに直接公開する。

【解答と解説】

正解:ア

アが正解です。設問のパケットフィルタ型FWはIPアドレスやポートで判断し、SQLの入力内容を検査する役割はWAFが担います。FW製品にアプリケーション検査機能がある場合もあり、全てのFWが内容を見られないという意味ではありません。

演習2:TCP 3ウェイハンドシェイクとSYN Flood攻撃の仕組み

〔背景〕B社の公開Webサーバに対して、外部の多数のIPアドレスから短時間に大量の「TCP SYNパケット」が送信され、Webサーバの接続待機キュー(バックログ)が枯渇して正規の利用者が接続不能になるDoS障害が発生した。

〔設問〕この攻撃(SYN Flood攻撃)において、攻撃者が意図的に行っている通信動作として最も適切なものはどれか。

  • ア:サーバからの「SYN/ACK」応答に対して、最後の「ACK」パケットを返さずに接続確立途中のハーフオープン状態を大量に放置する。

  • イ:サーバに対して大量の「FIN」パケットを送りつけ、セッションを強制終了させる。

  • ウ:UDPパケットの送信元IPアドレスをWebサーバ自身に偽装し、応答パケットを無限ループさせる。

  • エ:DNSサーバに対して大量のTXTレコード問合せを行い、返答パケットをWebサーバへ増幅集中させる。

【解答と解説】

正解:ア

解説:TCPの接続確立手順(3ウェイハンドシェイク:①クライアントからSYN → ②サーバからSYN/ACK → ③クライアントからACK)において、攻撃者は送信元IPアドレスを偽装したり、意図的に最後のACKを返送しなかったりします。これによりサーバは接続準備を整えた「ハーフオープン状態」でタイムアウトまで待機し続け、メモリや接続リソースを食いつぶされてサービス停止に追い込まれます。これが典型的な「SYN Flood攻撃(トランスポート層のDoS攻撃)」の手口です。

5. まとめと試験直前チェックリスト

  • OSI 7階層:ア・プ・セ・ト・ネ・デ・物(上から順にアプリ、プレゼン、セッション、トランスポート、ネットワーク、データリンク、物理)

  • カプセル化:上位層から下位層へヘッダーを付加。受信側で下から上へヘッダーを取り除く

  • TCP vs UDP:TCPはコネクション型・高信頼・順序制御あり。UDPはコネクションレス・高速・リアルタイム

  • セキュリティ機器の対応層:L3/L4はFW(IP/ポート)、L4〜L7はIDS/IPS(シグネチャ)、L7はWAF(Webアプリ保護)

出典と仕様を確認する

IPA:情報セキュリティマネジメント試験 シラバス Ver.4.1

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編集・検証:IT資格ラボ編集部

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