日程管理とクリティカルパス:アローダイアグラムの最早・最遅結合点とEVM進捗管理
作業を一つ短くすれば、プロジェクト全体も同じ日数だけ早く終わるのでしょうか?
全体の終了日を決める経路を短縮する必要があります。依存関係から工期と余裕時間を求め、EVMで進捗とコストを別々に評価します。
アローダイアグラムの基本記法とダミー作業のルール
アローダイアグラムは、作業の依存関係と所要日数をネットワーク図で視覚化したものです。
構成要素 | 表記記号 | 役割・意味 | ルール・注意点 |
|---|---|---|---|
結合点 (イベント) | 丸(○) | 作業の開始または終了という「瞬間」を表す。 | 時間は消費しない。ノード番号を中に記入する。 |
作業 (アクティビティ) | 実線矢印(→) | 人や資源を消費して行う具体的な作業。 | 矢印の上に作業名、下に所要日数・工数を記入する。 |
ダミー作業 | 破線矢印(--->) | 作業の着手順序(先行制約)のみを表現する作業。 | 所要時間は「0日」。同時に2つ以上の同一始点・終点作業が存在するのを防ぐ目的もある。 |
最早結合点時刻(前進計算)と最遅結合点時刻(後退計算)の鉄則
各イベントの発生時刻を計算する際、計算の向きによって取るべき値(最大値か最小値か)が正反対になります。このルールを絶対に混同してはなりません。
指標 | 計算の向き | 合流・分岐時の選択ルール | 意味・定義 |
|---|---|---|---|
最早結合点時刻 (Early Event Time) | 開始ノードから【前進(Forward Pass)】 | 複数作業が合流する時は【最大値(MAX)】をとる! | 先行する全作業がすべて完了し、次の作業に「最も早く着手できる時刻」。 |
最遅結合点時刻 (Late Event Time) | 終了ノードから【後退(Backward Pass)】 | 複数作業へ分岐する時は【最小値(MIN)】をとる! | 全体の納期を遅らせないために、そのイベントを「最も遅く完了しなければならない限界時刻」。 |
E[i]:イベントiの最早時刻、L[i]:最遅時刻
d(i,j):iからjへ向かう作業の所要時間
前進:E[j] = MAX(E[i] + d(i,j))
後退:L[i] = MIN(L[j] - d(i,j))
(終点のLは計画の完了時刻に設定)
作業(i,j)の全余裕時間 = L[j] − E[i] − d(i,j)
イベントiの余裕 = L[i] − E[i]
作業の余裕とイベントの余裕は異なるクリティカルパス(最長経路)の特定と短縮テクニック
プロジェクト開始から終了までで「所要日数の合計が最も長い経路」を「クリティカルパス(Critical Path)」と呼びます。
クリティカルパス上の作業は余裕時間(スラック)が「0」である。
クリティカルパス上のいずれかの作業が1日遅れると、プロジェクト全体の納期が直ちに1日遅延する。
クリティカルパス以外の作業は、全余裕時間の範囲内であれば遅れてもプロジェクト全体の終了日に影響しない。
日程短縮(Schedule Compression)の2大手法
手法名 | 具体的手順 | メリット | 発生するデメリット・リスク |
|---|---|---|---|
クラッシング (Crashing) | クリティカルパス上の作業に追加費用(人員増員・残業)を投入して期間短縮する。 | 順序関係を維持したまま短縮可能。 | プロジェクト全体のコスト(直接費)が増加する。 |
ファストトラッキング (Fast Tracking) | 本来は順番に行うはずの先行作業と後続作業を並行して同時に進める。 | 作業を重ねることで短縮を図る。追加費用が必ず不要になるわけではない。 | 手戻り(やり直し・リワーク)のリスクや品質低下リスクが高まる。 |
EVM(アーンドバリューマネジメント)の確認公式
EVMは、予定した作業と実際に達成した作業を、計画予算で金額に換算して比較します。実際に支出した費用も合わせ、進捗とコストを別々に評価します。
EVMの3大基本量
計画価値):現時点までに完了している予定だった作業の計画予算額。
出来高価値):現時点で実際に完了した作業の計画予算額(※実作業の価値)。
実コスト):現時点で実際に投入・消費された費用の実績額。
差異分析と効率指数(公式)
指標 | 計算式 | 良好な状態(健全) | 危険な状態(要注意) | 意味 |
|---|---|---|---|---|
コスト差異 (CV) | EV - AC | CV > 0 (予算内に収まっている) | CV < 0(出来高に対してコスト超過。利益の赤字とは別) | 出来高に対して投じた費用が予算より多いか少ないか。 |
スケジュール差異 (SV) | EV - PV | SV > 0 (予定より進んでいる) | SV < 0 (スケジュール遅延) | 計画していた出来高に対して実際の作業が進んでいるか。 |
コスト効率指数 (CPI) | EV / AC | CPI >= 1.0 (コスト効率良好) | CPI < 1.0 (コスト超過) | 1円投じたコストあたり、何円分の出来高を生み出せたか。 |
スケジュール効率指数 (SPI) | EV / PV | SPI >= 1.0 (進捗順調) | SPI < 1.0 (進捗遅延) | 計画通りのスピードに対して、何倍のペースで作業が進んでいるか。 |
実戦演習問題とステップ別解説
問1:アローダイアグラムのクリティカルパスと最短工期
作業A(4日)、B(3日)、C(2日)、D(5日)、E(3日)があります。CはA後、DはAとBの両方の完了後、EはB後に着手します。資源の制約なく並行できる場合、最短工期は何日でしょうか。
7日
9日
11日
14日
【正解】イ
【解説】経路ごとの所要日数を合算します。
・経路1(A → C):4 + 2 = 6日・経路2(A → D):4 + 5 = 9日・経路3(B → D):3 + 5 = 8日・経路4(B → E):3 + 3 = 6日作業Dは先行するAとBの両方が完了しなければ着手できません。
Aは4日、Bは3日かかるため、Dが着手できる最早時刻は MAX(4, 3) = 4日目となります。したがって最も日数がかかる経路は「A → D」の 4 + 5 = 9日(クリティカルパス)となり、最短工期は 9日 です。
問2:EVMによるプロジェクト状況の定量判定
ある開発プロジェクトの現時点における評価値が「PV = 100万円、EV = 80万円、AC = 90万円」であった。このプロジェクトの現在の状況として適切な説明はどれか。
スケジュールは予定より先行しており、コストも予算内に収まっている。
スケジュールは予定より遅延しており、コストも予算を超過している。
スケジュールは予定より先行しているが、コストは予算を超過している。
スケジュールは予定より遅延しているが、コストは予算内に収まっている。
【正解】イ
SV=80−100=−20万円で、予定した出来高に20万円分届いていません。CV=80−90=−10万円で、達成した出来高に対して10万円のコスト超過です。SPI=0.8、CPI≒0.89となり、正解はイです。
ここでいう予算超過は現時点の出来高に対しての評価です。
両端のイベントに余裕がなくても、作業には余裕がある
イベント1→2が5日、2→3が5日、1→3が1日とします。最早・最遅時刻は、順に0日、5日、10日です。イベントの余裕は全て0ですが、直接の1→3の作業には10−0−1=9日の余裕があります。
クリティカルパスは作業の余裕と経路で判断します。イベントの余裕が0だからといって、それらを結ぶ全ての作業がクリティカルとは限りません。短縮後は別の経路が最長になる場合があるため、再計算します。
EVMの金額を日数や利益と混同しない
SV=−20万円は、計画した予算価値に対して20万円分の作業が未達という意味です。20日遅延という意味ではありません。CV=−10万円も、利益が10万円の赤字という意味ではありません。
EV/PVはPVが0、EV/ACはACが0の場合は通常の除算で評価できません。作業完了後にEV=PVとなっても、実際の納期遅延が消えるわけではなく、工期は日程表でも確認します。
出典と仕様を確認する
IPA:FEシラバス Ver.9.2
米国エネルギー省:EVM
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