AP科目Bの記述式|設問・本文根拠・条件から短い答案を作る
用語は知っているのに、記述式の答案が書けない。設問と本文のどこを見れば、短く的確な答えにできるのでしょうか。
知っている用語を書いたのに、設問に答えた文章にならない。その原因は、知識が足りない場合だけではありません。「何について、どの条件の下で、何を説明するか」を取り違えると、正しい知識も答案の根拠になりません。
この記事では設問の読み方から根拠の選び方、短い文章へのまとめ方までを一つの事例で学びます。
事例:受注を止めずに、どう変更するか
A社は、受注システムを平日9〜18時に使います。アプリサーバは2台ですが、データベースは1台です。DB保守では全利用者の入力を停止します。バックアップは毎日0時に取得し、復元には90分を要します。
利用部門は「停止60分以内、失う入力は15分以内」を求めています。
問題文にこの条件が示された場合、サーバ2台という語だけで「可用性は十分」と判断できません。DB停止の影響、バックアップ間隔、復元時間を、利用部門の要求と別々に比べる必要があります。
本文の事実 | 導けること/導けないこと |
|---|---|
DBは1台で保守時に入力停止 | アプリ2台だけではDB保守時の停止を防げない |
0時取得、復元90分 | この復元手段は停止60分以内を満たさない |
バックアップは毎日0時 | バックアップだけを使うなら日中の入力を15分以内に保護できない |
障害発生時刻は未記載 | 失う入力の具体的な時間数は断定できない |
要求と実測・設定を並べると、根拠のある答案が書けます。ただし「常に24時間分失う」とは書けません。障害時刻によって損失の範囲は変わり、本文に別のログ回復手段があればさらに変わるためです。
理由・原因・対策・効果は、どう答え分けるか
まず答案に必要な役割を見分けます。理由は判断が妥当である根拠、原因は事象を生じさせた要因、対策は要因や影響に働きかける行動、効果は行動によって変わる状態です。名前が似ていても、答える向きが違います。
指示 | 答えの中心 |
|---|---|
理由 | 対象の条件と、選択した方法がその条件を満たす関係 |
原因 | 起きた事象と、それを生じさせた仕組み |
対策 | 誰が何を、どこに対して行うか |
効果 | 対策の前後で、何がどう改善・抑制されるか |
「ログを確認する理由」に「ログを確認する」と答えても行動の繰返しです。「利用者と操作時刻を照合し、不正な操作の範囲を特定するため」と、確認によって得たい判断まで示します。
答案の根拠は、本文のどこから拾うか
設問を読み、対象に印を付けます。次に対象の動作を述べる本文、図の接続先、表の数値を探します。「ただし」「〜の場合」「〜のみ」「変更後」は答えを制約する語です。一般論を書き始める前に、これらの条件を答案の材料として残します。
複数箇所の根拠を組み合わせるときは、間をつなぐ仕組みが必要です。「DBは1台」「DB保守で入力停止」「アプリは2台」を結ぶと、「DBが共通の停止箇所なので、アプリを冗長化しても保守時に入力が止まる」と説明できます。
単に3文を抜き出すより判断の関係が明確です。
短い答案は、必要な関係を残す
答案は「対象+働きかけ/要因+結果」を基本にします。主語や目的語を省きすぎると、どの機器・処理を指すか分からなくなります。字数が厳しいときは、同じ意味の繰返し、設問の再掲、結論に不要な形容を先に削ります。
例えば「システム全体が停止してしまう可能性があると考えられるので」は、確認済みの条件なら「共通DBの停止で全入力が止まるため」とできます。断定してよいかは根拠次第です。短くするために「共通DB」という成立条件を削ってはいけません。
弱い答案 | 直した答案 |
|---|---|
冗長化する | DB停止時も入力を継続できるようDBを冗長化する |
バックアップが不十分 | 取得間隔が15分の損失許容を超えるため |
時間が長い | 復元90分が停止許容60分を超えるため |
記述の採点は、公式の解答例と一字一句同じ文章を書くことだけを目標にしません。対象・条件・因果の必要な要素があるかを確かめます。一方、設問が本文の用語や語句を求めている場合は、指定された表記と答えの形式を守ります。
図表・数値は文章に戻して確認する
構成図は箱の数だけでなく、共有する機器、通信の方向、切替先を読みます。表は列見出し・単位・集計対象・時刻の基準を先に確認します。割合の分母が業務時間か全時間かで値は変わります。計算は値を代入する前に、求める量と同じ単位の式を作ります。
例えば5時間に対する停止3分の割合は、3÷(5×60)=0.01です。5時間を5分として扱うと60倍の誤りになります。単位をそろえた後で、1%という結果が本文の状況に合うかを確認します。
図表読解と個々の性能・可用性の理論は別の技能なので、詳細な公式はテーマの主担当記事で学びます。
対象時間:5時間 = 300分
停止割合:3分 / 300分 = 0.01 = 1%
答案:対象5時間のうち停止は1%
確認:対象時間と停止時間の単位は一致演習1:理由を書く
条件:アプリは2台、DBは1台。DB保守中は全入力停止。
問い:アプリの冗長化だけでは入力停止を防げない理由を40字以内で書く。
解答例:共通DBの保守で両アプリからの入力が停止するため。
根拠と誤答の確認:必要要素は共通のDBと全入力停止の関係。「冗長化が不十分」だけでは停止の仕組みが分かりません。
演習2:原因と対策を分ける
条件:DB復元に90分かかる。停止許容は60分。
問い:復元だけでは要求を満たせない原因を答える。
解答例:復元所要時間90分が停止許容60分を超えるため。
根拠と誤答の確認:「待機DBを置く」は対策であり原因の答えではありません。
演習3:分からないことを残す
条件:最後のバックアップは0時。障害時刻は不明。ログ回復の記載もない。
問い:失った入力時間を24時間と断定できるか。
解答例:できない。障害時刻が示されず、0時以降の経過時間が不明なため。
根拠と誤答の確認:バックアップ間隔から最大規模の可能性は考えられても、実際の損失時間とは別です。
演習4:効果を書く
条件:待機DBへ切替できる方式を採用する。切替条件はDB障害。
問い:方式の効果を述べる。
解答例:DB障害時に待機DBへ処理を移し、入力停止時間を短縮できる。
根拠と誤答の確認:「待機DBを置く」は実施内容。効果は入力停止時間がどう変わるかです。具体的な短縮時間は未提示なので書きません。
演習5:計算の分母をそろえる
条件:対象業務時間は8時間。停止は12分。
問い:停止割合を求める。
解答例:12÷(8×60)=0.025、2.5%。
根拠と誤答の確認:分母は480分。「12÷8」は分と時間が不一致です。丸めの指定があれば最後に適用します。
演習6:字数を減らす
条件:入力損失許容15分。バックアップだけによる回復で取得間隔は24時間。
問い:現行の取得間隔では不十分な理由を35字以内で書く。
解答例:取得間隔24時間が入力損失の許容15分を超えるため。
根拠と誤答の確認:字数を減らす際も取得間隔と許容の比較を残します。障害時に必ず24時間失うという断定は不要です。
見直しで確認する四つの点
設問の対象・理由/原因/対策/効果の指示に答えているか。
本文の条件、図の共有箇所、表の単位を取り違えていないか。
対象と因果関係が短い答案にも残っているか。
未確認の被害・時間・効果を断定していないか。
参照資料とこの記事の範囲
技術仕様とIPAの公開資料を照合し、特定年度の問題本文を前提にせず学べる構成にしています。
IPA APシラバスVer.7.2
IPA 2023年春期AP午後 採点講評
IPA 2025年秋期AP午後 採点講評
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